「あつい……」
頬を伝う汗を手の甲で拭いながら、空を青く染め上げ、そして自身も白く輝かせている太陽に目を向けた。
夏。その証拠に道路の横にまばらに植えられている街路樹に停まっているセミが、けたたましく鳴き叫んでいる。
ビーチサンダルを引っ掛けて買い物に出たのは良いが、店先で財布を忘れたことに気づいて、また家に戻るだなんてかっこ悪すぎる。
こういうときに限って自転車はパンクしているし、まったくついていないというものだ。
カンカンと照りつける陽光を背中で受け止め、ただただだらだらと歩いていると、ふわっと風が凪いで来る。
微かに潮の匂いを含んだその風は冷たくて、そして清々しかった。